量子力学

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第12回 量子力学の解釈とは何か

量子力学は、観測された結果の分布を正確に予測できる理論であり、長年にわたって数多くの実験的検証にも耐えてきた。前回見たように、その枠組みは観測の限界に根ざして構成されている。にもかかわらず、量子力学が「不思議な理論」とされるのは、観測の前に...
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第11回 測れないことが、理論を形づくった──不確定性原理の本当の立ち位置

前回、Bellの定理によって、量子力学が示す相関が、局所的な隠れた変数では説明できないことを見た。だが、なぜそんな相関が現れるのか──その背景には、量子論自体が持つ構造的な制約がある。その最たるものが、不確定性原理だ。量子力学には、粒子の位...
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第10回 隠れた変数は否定されたって、本当に言えるのか?

前回見たように、量子力学では「通ったかどうか」という問い自体が成立しない場合がある。だがそれでも、観測された結果には強い相関が現れる。いったいそれは、何によって決まっているのか?量子力学の背後に、私たちの知らない「隠れた変数」があるという考...
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第9回 ハーディのパラドックス──ぶつかったはずなのに、消えていない?

「ハーディのパラドックス」と呼ばれる有名な思考実験がある。電子と陽電子が、それぞれ干渉計に入る。構造としては、粒子が特定の経路を選ぶと、途中で交差する“ぶつかりポイント”がある。両方がそこを通れば、粒子は対消滅して検出されない。ところが実験...
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第8回 順番を確定させずに協力する――プロセスマトリクスという構成

量子力学では、操作の順序が結果に影響することがある。測定してから操作する場合と、操作してから測定する場合とでは、得られる結果が異なることがある。これは一見すると当たり前の話に見えるかもしれないが、量子系ではこうした順序の影響が非常に本質的な...
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第7回 整合していたはずの記録は、何を意味していたのか?

前回見た1ペア構成の実験では、Bという光子が2つの経路のどちらかを通る際、その情報がAという別の光子の偏光に記録されるようになっていた。AをH/Vの偏光基底で測定すれば記録された経路が読み出され、+45°で測定すれば読み出せない。記録が読み...
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第6回 記録されたはずの情報が、干渉に現れた?

前回は、量子力学の自己記述の限界を問うFRパラドックスの構成を検討し、「観測されたはずの事実に基づいて推論を進めると、理論全体が矛盾する」という、量子論の内的破綻を導く論理を確認した。そこで問題になっていたのは、FやF′が観測した内容が本当...
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第5回 FRパラドックス──量子力学は、自分自身を記述できないのか?

前回、ウィグナーの友人という構成では、「観測されたはずの情報が干渉に現れる」といった状態は、量子力学のルール上、実際には構成できないことを確認した。観測によって情報が記録されれば、それは環境に広がり、干渉は壊れる。つまり、記録がある限り、外...
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第4回 「観測された」というのは、誰の視点か?

ここまでの議論では、「粒子がどちらを通ったか」という情報が干渉の有無を左右すること、そしてその情報が“誰にも知られていなくても”影響することを見てきた。二重スリットに偏光を加えた構成や量子消しゴムの実験では、「情報があるかどうか」が干渉の成...
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第3回 「情報がある」とは、どういうことか?

前回は、スリットを通る光子に縦・横の偏光を与えることで、どちらのスリットを通ったかの情報を持たせ、さらにそれを45度のフィルターで消すことで干渉が戻るという構成を見た。「量子消しゴム」とも呼ばれるこの手法は、いったん区別された情報をあとから...