量子力学

第5回 周期を観測できるようにする──構造を変換し、干渉を引き出す

前回、$f(x) = a^x \mod N$ の周期性を、量子状態として物理的に構成した。出力 $f(x)$ が同じになるような $x$──たとえば $x$, $x + r$, $x + 2r$, …──が、同じ $|f(x)\rangle...
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第4回 素因数分解は「周期を見つける問題」に変えられる

素因数分解は、一見すると単純な問題に見える。ある自然数 $N$ を、どの素数の積で表せるかを調べるだけだ。だが、この単純さの裏には、計算上の深い難しさがある。特に $N$ が非常に大きくなったとき、効率よく因数を求める手段は限られている。S...
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第3回 答えはどうやって出てくるのか──観測の実装と干渉の終点

Groverのアルゴリズムでは、すべての構成を重ね合わせた状態を用意し、正解にだけ符号を反転させる操作(oracle)と、振幅を平均で折り返す操作(振幅反転)を繰り返すことで、正解構成の振幅だけを強調していく。この操作が何回か繰り返されると...
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第2回 重ね合わせを使うとは、どういうことか?

前回は、量子ビットが「0と1の両方を含んだ状態=重ね合わせ状態」を取ることができ、その状態を物理的にどう作っているかを見た。今回は、その構造が計算にどう使えるかを、Groverのアルゴリズムという例を通して見る。問題の設定:構造のない探索こ...
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第1回 量子コンピュータでは、どうやって「重ね合わせ」を作っているのか?

「量子超越」を達成したとか、IBMが100量子ビットを超えるチップを発表したといった話を耳にしたことがある人もいるかもしれない。でも、それがどれほどすごいのか、そもそも量子コンピュータとは何をどうやって動かしているのか、具体的にイメージでき...
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第13回 なぜ未来を覚えていないのか──観測と時間の矢

量子力学の基本方程式は、時間を逆向きにしても成り立つ。シュレディンガー方程式も、ディラック方程式も、時間の向きを変えても形を変えない。この意味では、量子力学は時間に対して対称的な理論である。それにもかかわらず、我々が現実に経験する世界には「...
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第12回 量子力学の解釈とは何か

量子力学は、観測された結果の分布を正確に予測できる理論であり、長年にわたって数多くの実験的検証にも耐えてきた。前回見たように、その枠組みは観測の限界に根ざして構成されている。にもかかわらず、量子力学が「不思議な理論」とされるのは、観測の前に...
量子力学

第11回 測れないことが、理論を形づくった──不確定性原理の本当の立ち位置

量子力学には、粒子の位置と運動量を同時に正確に知ることはできない、という特徴的な制約がある。この考え方は、単なる経験則ではなく、量子論の基本的な構造の一部として受け止められてきた。その背景には、観測という行為が系に与える影響や、状態の記述に...
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第10回 隠れた変数は否定されたって、本当に言えるのか?

前回見たように、量子力学では「通ったかどうか」という問い自体が成立しない場合がある。だがそれでも、観測された結果には強い相関が現れる。いったいそれは、何によって決まっているのか?量子力学の背後に、私たちの知らない「隠れた変数」があるという考...
量子力学

第9回 ハーディのパラドックス──ぶつかったはずなのに、消えていない?

「ハーディのパラドックス」と呼ばれる有名な思考実験がある。電子と陽電子が、それぞれ干渉計に入る。構造としては、粒子が特定の経路を選ぶと、途中で交差する“ぶつかりポイント”がある。両方がそこを通れば、粒子は対消滅して検出されない。ところが実験...