量子力学

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第8回 順番を確定させずに協力する――プロセスマトリクスという構成

量子力学では、操作の順序が結果に影響することがある。測定してから操作する場合と、操作してから測定する場合とでは、得られる結果が異なることがある。これは一見すると当たり前の話に見えるかもしれないが、量子系ではこうした順序の影響が非常に本質的な...
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第7回 整合していたはずの記録は、何を意味していたのか?

前回見た1ペア構成の実験では、Bという光子が2つの経路のどちらかを通る際、その情報がAという別の光子の偏光に記録されるようになっていた。AをH/Vの偏光基底で測定すれば記録された経路が読み出され、+45°で測定すれば読み出せない。記録が読み...
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第6回 記録されたはずの情報が、干渉に現れた?

前回は、量子力学の自己記述の限界を問うFRパラドックスの構成を検討し、「観測されたはずの事実に基づいて推論を進めると、理論全体が矛盾する」という、量子論の内的破綻を導く論理を確認した。そこで問題になっていたのは、FやF′が観測した内容が本当...
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第5回 FRパラドックス──量子力学は、自分自身を記述できないのか?

前回、ウィグナーの友人という構成では、「観測されたはずの情報が干渉に現れる」といった状態は、量子力学のルール上、実際には構成できないことを確認した。観測によって情報が記録されれば、それは環境に広がり、干渉は壊れる。つまり、記録がある限り、外...
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第4回 「観測された」というのは、誰の視点か?

ここまでの議論では、「粒子がどちらを通ったか」という情報が干渉の有無を左右すること、そしてその情報が“誰にも知られていなくても”影響することを見てきた。二重スリットに偏光を加えた構成や量子消しゴムの実験では、「情報があるかどうか」が干渉の成...
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第3回 「情報がある」とは、どういうことか?

前回は、スリットを通る光子に縦・横の偏光を与えることで、どちらのスリットを通ったかの情報を持たせ、さらにそれを45度のフィルターで消すことで干渉が戻るという構成を見た。「量子消しゴム」とも呼ばれるこの手法は、いったん区別された情報をあとから...
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第2回 確定したはずの情報が、なぜ干渉するのか?

前回、粒子を一つずつスリットに通しても干渉縞が現れ、「どちらを通ったか」が観測可能になると干渉が壊れることを見た。そこから、「観測されると状態が一つに定まる」という説明が生まれてくる。だが、実験を少し工夫すると、観測されたはずの情報をあとか...
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第1回 粒子はどちらのスリットを通ったのか?

量子力学は観測のたびに世界の様子が変わるように見える、不思議な理論だ。この連載では、その根本にある仕組みを、実験や理論の構成を通して丁寧に追っていく。波のようにふるまう粒子量子力学というと、「粒子が波のようにふるまう」とか、「観測するまで結...