第3回:プレートの境界では何が起きているのか

地震

プレートの境界で何が観測されているのか

前回、プレートを動かす力としてスラブプルが主役であることを見てきた。スラブプルはプレートが沈み込むことで生まれる力だ。しかしそもそもプレートの境界ではどのようなことが観測されているのか。そしてその観測から何が考えられているのか。

プレートの境界には三種類ある。プレートが離れていく発散境界、プレートがぶつかり合う収束境界、そしてプレートがすれ違うトランスフォーム断層だ。それぞれで観測されることは全く異なる。


発散境界で何が観測されているのか

発散境界ではGPSの観測によってプレートが互いに離れていることが直接計測されている。その境界に沿って海嶺と呼ばれる海底山脈が形成されており、海嶺は海底火山の連なりだ。アイスランドは海嶺が海面上に出た例であり、現在も活発な火山活動が観測されている。

海嶺の下を地震波トモグラフィーで調べると、地震波の速度が遅い領域が観測されている。地震波は高温の場所では遅くなるため、これは海嶺の下に高温のマントルが存在することを示している。ただしその高温領域は深さ約300〜400km程度までで、それより深くからの上昇は東太平洋海嶺を除いて確認されていない。

ではなぜ海嶺で火山が生まれるのか。プレートが離れることでその下のマントルにかかる圧力が下がる。圧力が下がると岩石の融点も下がる。温度は変わらないのに融点が下がるため、マントルが部分的に溶けてマグマになる。これを減圧融解と呼ぶ。生まれたマグマは密度が低いため上昇し、海底に噴き出して新しい海洋プレートを作りながら冷えて固まる。

発散境界は海底だけにあるわけではない。アフリカ大陸を南北に走るグレートリフトバレーは大陸上にある発散境界の例だ。ここではアフリカプレートがヌビアプレートとソマリアプレートに分裂しつつあり、年間8〜9mmの速度で離れていることがGPSで観測されている。地形が低くなった場所に水が流れ込み湖が生まれている。現在の紅海はこの過程がさらに進んだ例であり、プレートが完全に分離して海が生まれた状態だ。


トランスフォーム断層で何が観測されているのか

プレートがすれ違うトランスフォーム断層では、GPSの観測によってプレートが横方向にずれていることが直接計測されている。アメリカのサンアンドレアス断層では太平洋プレートと北アメリカプレートが年間約2〜3.5cmずつすれ違っていることが観測されている。

このすれ違いによって断層に沿って強いひずみが蓄積する。そのひずみが解放されるときに大きな地震が起きる。1906年のサンフランシスコ地震(M7.9)はこのサンアンドレアス断層で起きた地震だ。トランスフォーム断層ではプレートが横にずれるだけで、プレートが生まれることも沈み込むこともないため火山は生まれない。しかし断層に沿ってひずみが蓄積し続けるため、地震が繰り返し起きる。


収束境界で何が観測されているのか

収束境界ではGPSの観測によってプレートが互いに近づいていることが直接計測されており、その境界には海溝と呼ばれる深い溝が形成されている。

地震波トモグラフィーによると、海溝の下には地震波の速度が速い領域が観測されている。地震波は低温の場所では速くなるため、これは冷たいプレートが沈み込んでいることを示している。この沈み込んだプレートをスラブと呼ぶ。

ではなぜ収束境界で火山が生まれるのか。海洋プレートはもともと海水が染み込んでおり、堆積物にも水分が含まれている。プレートが深さ70〜300km程度まで沈み込むにつれて温度と圧力が上がると、これらの水分が鉱物から絞り出されるように染み出してくる。水分が加わるとマントルの融点が下がる。融点が下がることでマントルが部分的に溶けてマグマになる。これをフラックス融解と呼ぶ。生まれたマグマは上昇し、地殻を突き抜けて地表に出ると火山になる。

発散境界での火山と収束境界での火山では、マグマが生まれるメカニズムが異なる。発散境界では圧力が下がることでマグマが生まれるのに対して、収束境界では水分が融点を下げることでマグマが生まれる。その結果として、発散境界では玄武岩質の火山が生まれ、収束境界では粘性の高いマグマによる爆発的な噴火を起こしやすい火山が生まれやすい。日本の火山の多くがこれにあたる。

収束境界でぶつかり合うプレートの組み合わせによって起きることが異なる。海洋プレートと大陸プレートがぶつかる場合、密度の高い海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む。日本列島はこの典型例だ。海洋プレートと海洋プレートがぶつかる場合、密度の高い方が沈み込み、火山島が弧状に形成される。大陸プレートと大陸プレートがぶつかる場合、どちらも密度が低いため沈み込まずに押し合い、山脈が形成される。ヒマラヤ山脈はインドプレートとユーラシアプレートがぶつかって生まれた山脈で、現在も年間数mmずつ高くなり続けていることがGPSで観測されている。


プレートテクトニクスが説明できること

ここまで三回にわたってプレートテクトニクスの基本的な枠組みを見てきた。

プレートとは何か。なぜ動くのか。境界では何が起きているのか。これらの問いに対して、GPSや地震波トモグラフィー、地球化学的な分析など、さまざまな観測手法を組み合わせることで、かなりのことがわかってきている。どの地域で地震が起きやすいのか、なぜその場所に火山があるのか、なぜヒマラヤ山脈があるのか。こういった問いにはプレートテクトニクスは強力な説明を与える。

しかしプレートテクトニクスが説明できることには限りがある。次回は、この枠組みでは説明しきれないことを見ていく。

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